部下の「揺れる気持ち」とどう向き合う?――アンビバレンスを力に変えるマネジメントのヒント

前回の記事では、「やる気」を引き出すには“正しさ”を押し付けるのではなく、部下自身の中にある「変わりたい理由」を引き出す対話が大切だとお伝えしました。
でも実際には、部下の心の中には「変わりたい自分」と「今のままでいたい自分」が同居していることが多いものです。この“アンビバレンス(両面性)”は、決して悪いものではありません。むしろ、誰もが持つ自然な心の動きです。
アンビバレンスを否定しない
「やる気がない」「迷っている」と感じる部下を前に、つい「どっちなの?」「はっきりしなさい」と迫りたくなることもあるでしょう。でも、アンビバレントな気持ちを否定したり急かしたりすると、かえって部下は心を閉ざしてしまいがちです。
「やる気が出ない自分も、変わりたい自分も、どちらも本当の気持ち」
まずはそう認めることから始めましょう。
アンビバレンスを力に変える3つのコツ
1. 迷いを言葉にしてもらう(両面を可視化する)
「やりたい気持ち」と「やりたくない気持ち」それぞれについて、あえて両方を聞いてみましょう。
- 「やってみたいと思う理由はどんなこと?」
- 「逆に、踏み出せない理由や不安は何?」
部下が自分の中の矛盾を言葉にできると、気持ちが整理されやすくなります。
2. 判断を急がせず、“揺れ”を一緒に味わう
「どちらの気持ちも持っていていいんだよ」と伝え、すぐに結論を出させるのではなく、しばらくその“揺れ”を一緒に受け止めてみてください。
- 「迷うのは自然なことだよ」
- 「どちらの気持ちも大事にしていいと思う」
この“保留”の時間が、部下の自己理解や納得感を深める土台になります。
3. 小さな一歩を一緒に考える
「100%やる/やらない」ではなく、「まずはここだけやってみようか?」という小さな行動目標を一緒に探してみましょう。
- 「全部やるのは難しくても、まずはこの部分だけ試してみるのはどう?」
- 「不安な点があれば、サポートできることはあるかな?」
小さな成功体験が、次の行動への自信につながります。
「揺れ」を尊重することで生まれる主体性
アンビバレントな気持ちは、決して「優柔不断」や「やる気がない」証拠ではありません。むしろ、部下が本気で自分と向き合っている証拠です。
リーダーがその“揺れ”を否定せず、寄り添いながら一緒に考えることで、部下は「自分で選んだ」という納得感を持って行動できるようになります。
「迷いながらも進む」――そのプロセスこそが、部下の成長の原動力になるのです。
まずは、面談や1on1で「どちらの気持ちもOK」と伝える一言から始めてみませんか?
部下の“揺れる気持ち”を尊重することが、チーム全体のしなやかな成長につながっていくはずです。