動機づけ面接のエッセンスを1on1に活かす!

動機づけ面接

「やる気」はどこから?部下の心に火を灯す、関わり方のヒント

チームを率いるリーダーの皆さんとお話ししていると、こんなお悩みをよく耳にします。

「若手メンバーに『何のために働くのか』と聞くと、『プライベートを充実させるため』と答える。もちろんそれも大事だけど、仕事そのものへの情熱をどう引き出せばいいかわからなくて…」

「良かれと思ってしたアドバイスが、相手にとっては『余計なお世話』や『プレッシャー』になっているんじゃないか。そう思うと、どう関わればいいか、常に手探り状態なんです」

…どうでしょう。あなたも、似たような壁にぶつかった経験、ありませんか?
部下に主体的に動いてほしいと願いながらも、その「やる気」という見えないものに、どうアプローチすればいいか分からなくなってしまう。

今日は、そんな悩みのヒントになるかもしれない、「動機づけ面接」というコミュニケーション手法のエッセンスについて、少しだけ一緒に考えてみたいと思います。

「正しさ」では、心は動かない

まず、多くのリーダーが陥りがちなのが、「正しい答え」を教えようとすることです。「こうすればもっと成長できる」「この仕事にはこういう意義がある」と、熱意をもって語れば語るほど、なぜか相手の心は離れていってしまう…。

それは、人が「変わりたくない」頑固な生き物だから、というわけではありません。
むしろ、人には「変わりたい自分」と「今のままでいたい自分」が、常に同居しているからです。そんな時に、外から「こうすべきだ」と正論をかぶせられると、無意識に「今のままでいたい自分」を守ろうと、抵抗が生まれてしまうのです

ヒントは「引き出す」コミュニケーション

そこでヒントになるのが、「動機づけ面接」の考え方です。
これは、相手の中から「変わりたい」という気持ちや理由を、本人の言葉で引き出すことを目的とした、協力的な会話のスタイルです。外からモチベーションを注入するのではなく、本人の内側から湧き出てくるのを手伝う、というイメージですね

なにも、専門的なカウンセリング技術を学ぶ必要はありません。日々の1on1などで、ほんの少し意識を変えるだけで、部下の反応は変わってくるかもしれません。

1. 「答え」ではなく「物語」を尋ねる(開かれた質問)
「何か困ってる?」と聞くと、「特にないです」で終わってしまいがちです。そうではなく、「最近、仕事で『面白いな』と感じたのはどんな瞬間だった?」とか、「プライベートを充実させるために、大事にしていることって何?」のように、相手が自由に語れる質問を投げかけてみましょう。相手の価値観や、心が動くポイントが見えてくるかもしれません。

2. 相手の世界を、一緒に眺めてみる(共感的な傾聴)
ただ話を聞くだけでなく、「なるほど、そういう点を大事にしているんだね」と、相手の気持ちや考えを尊重する姿勢が大切です。信頼関係が築かれると、部下も安心して本音を話せるようになります

3. 小さな「変わりたい」の芽を見つけて、光を当てる
もし部下が、「本当は、もう少し〇〇できたらいいんですけどね」といった前向きな言葉(チェンジトーク)を口にしたら、それが絶好のチャンスです。すかさず「いいね!その『〇〇できたら』っていうの、もう少し聞かせてもらえる?」と、その芽に光を当ててみましょう。本人が自分の口で「変わりたい理由」を語るほど、実際の行動へとつながりやすくなります。

「プライベートのため」から始まる、新たな可能性

冒頭の「プライベートを充実させるために働く」という若手メンバー。彼らを「意識が低い」と切り捨てるのではなく、動機づけ面接の視点で関わってみると、どうでしょうか。

「プライベートの充実って、具体的にどんなこと?」「それを実現するために、今の仕事で活かせそうなことや、逆に課題に感じることはある?」

こんな対話の中から、本人が「スキルアップすれば、もっと効率的に仕事が終わって、プライベートの時間も確保できるかもしれない」という、**自分自身の「変わりたい理由」**を見つけ出すかもしれません。

リーダーの役割は、完璧なアドバイスをすることではなく、部下が自分自身の答えを見つけるための、安全で信頼できる「壁打ち相手」になることなのかもしれませんね。

もちろん、いつでもうまくいくわけではありません。でも、部下の「やる気がない」ように見える態度の裏には、まだ言葉になっていない「変わりたい」気持ちが隠れているかもしれない。そう信じて関わってみるだけで、視点が少し変わってくるはずです。

まずは次の面談で、「開かれた質問」を一つだけ、増やしてみませんか?