「気にしない」をチームの公式ルールに

―認知行動療法に学ぶ、ストレスに強いチームの作り方―
「上層部の方針がまた変わった」「景気が読めず先が見えない」――組織で働く限り、私たちは自分では動かせない出来事に日々さらされています。そこで消耗せず“影響できる範囲”にエネルギーを集中させる──これは認知行動療法(CBT)、ストア哲学、そして『7つの習慣』に共通する実践知です。以下では、その考え方をチームマネジメントに落とし込む具体策を紹介します。
1. 二つの輪で思考を仕分ける
CBTでは「出来事」「認知」「感情」「行動」が相互に影響すると捉えます。まずは出来事を

2. 影響の輪を広げる三つのステップ
- 事実と解釈を分離する
例:売上目標が引き上げられた(事実)→「達成は無理だ」と感じる(解釈)。まずはメンバーと事実を言語化し、解釈に気づかせます。 - 行動可能な最小単位を決める
ストア哲学は「自分の行動と判断にのみ責任を持て」と説きます。会議で「影響できる行動」「できない要因」のリストを作り、前者から具体策を選びます。 - 小さな成功を可視化する
「影響の輪」に集中すると輪は徐々に拡大する――『7つの習慣』が示した通りです。週次ミーティングで達成度を共有し、成功体験を雪だるま式に増やしましょう。
3. 公式ルール化する仕掛け
ルール | ねらい | 例 |
---|---|---|
コントロール表明 | 課題着手時に「自分が動かせる要素」を宣言する | 「提案書の質」「提案数」は自分が動かせる |
グチのルール | 不満は“影響できる提案”とセットで共有 | 「価格は変えられない。でも別プランを提示しよう」 |
リフレーミング質問 | ネガティブ発言に対し認知を拡張 | 「もし友人が同じ状況なら何と助言する?」 |
これらをチーム合意のドキュメントに明文化し、人事評価とも連動させれば実効性が高まります。
4. リーダーが守るべき三つの約束
- 自ら実践する
リーダーが「関心の輪」(例:株価)で嘆けば、メンバーも同調します。率先して影響の輪に集中しましょう。 - 感情を否定しない
「気にするな」と感情を封じるのは逆効果です。CBTは感情を“観察”しつつ行動を選ぶアプローチ。共感を示しつつ視点転換を促してください。 - 専門機関と連携する
個人のメンタル不調が疑われる場合は産業医やEAPにつなぐのが鉄則です。
おわりに
景気も上司の機嫌も動かせません。しかし思考と行動はいつでも選べる。チーム全員がこの前提を共有し、影響の輪にエネルギーを注ぐ文化を育てれば、不確実な時代でも折れにくい“しなやかな強さ”が生まれます。今日のミーティングから、まずは「それは関心の輪?影響の輪?」と問いかけることから始めてみませんか。