ストレスに強い心の「クセ」のつくり方

私には世界の終わりなのに、あの人は…
こんにちは。
仕事でちょっとしたミスをして、一日中気分が沈んでしまった…なんて経験、あなたはありませんか? 恥ずかしながら、私もしょっちゅうあります(笑)。一つの出来事が、まるで世界の終わりのように感じられてしまうこと、ありますよね。
でも、周りを見渡してみると、同じような状況でも、意外と平気な顔をしている人もいる。この違いって、一体どこから来るんでしょうか。
今日は、そんな「ストレスとの上手な付き合い方」について、少し考えてみたいと思います。
気分を決めるのは「出来事」ではなく「捉え方」
ヒントになるのが、「認知療法」という心理学の考え方です。なんだか難しそうに聞こえますが、その基本となる仮説はとてもシンプル。
それは、**「人の気分や行動は、その人の出来事に対する理解の仕方によって影響を受ける」**というものです。
どういうことかと言うと、私たちを落ち込ませたり、イライラさせたりするのは、目の前で起きた「出来事」そのものではない、ということなんです。同じ出来事であっても、人によって解釈は様々です。その出来事をどう解釈したか、つまり「認知」が、私たちの気分や行動に影響している、というわけです。
例えば、「上司にプレゼンを酷評された」という出来事があったとします。
ある人は、「もうだめだ。自分はなんて能力がないんだ」と解釈し、ひどく落ち込んでしまうかもしれません。
でも、別のある人は、「なるほど、自分にはない視点だ。次はもっと良くできるぞ」と解釈し、むしろやる気を出すかもしれない。
出来事は同じなのに、不思議ですよね。でもこれって、すごく重要なことだと思いませんか?
しなやかな心「ハーディネス」とは?
この「しなやかな捉え方」を助けてくれる心の特性の一つに、**「ハーディネス(Hardiness)」**というものがあります。「精神的な頑健性」とか「心のタフさ」なんて訳されたりしますね。
このハーディネスが高い人は、ストレスの多い状況を広い視野で捉え、それをそれほど脅威ではないと解釈する傾向があると言われています。まさに、先ほどの後者の人のような捉え方ができる力、と言えるかもしれません。
じゃあ、そのハーディネスって、具体的にどんな要素でできているんでしょうか。主に3つの要素(3つのC)があると言われています。
- コミットメント(Commitment):関与
これは、自分の仕事や生活、人間関係などに、積極的に関わっていこうとする姿勢のことです。「どうせ無駄だ」と投げやりになるのではなく、「自分にとってこれは大事なことだ」と意味を見出し、関わっていく力ですね。 - コントロール(Control):制御
自分の人生は、自分の力でコントロールできる、変えていける、と信じる感覚です。困難な状況に陥っても、「自分にはどうすることもできない」と諦めるのではなく、「何かできることがあるはずだ」と解決策を探そうとする姿勢につながります。 - チャレンジ(Challenge):挑戦
変化やストレスフルな出来事を、「脅威」ではなく「成長の機会」と捉える傾向のことです。失敗や困難も、新しい学びや経験を得るための「挑戦」だと解釈する力。これが、しなやかに立ち直る力にも繋がっていきます。
「ハーディネス」は、今からでも育てられる
「なるほど、でもそういうのって生まれつきでしょ?」と思われるかもしれませんね。
確かに、ハーディネスは幼少期の経験で育まれる部分が大きいと言われています。でも、嬉しいことに、大人になってからでも、意識的な経験やトレーニングで高めることができるとされているんです。
例えば、何か困難なことがあった時に、この3つのCをちょっとだけ意識してみる。
「この状況から学べることは何だろう?(チャレンジ)」
「今の自分に、ほんの少しでもコントロールできることはないか?(コントロール)」
「そもそも、なぜ自分はこのテーマに取り組んでいるんだっけ?(コミットメント)」
こんなふうに、自分に問いかけてみるだけでも、出来事の「捉え方」が少しずつ変わってくるかもしれません。
もちろん、いつでもこんな風に前向きに捉えられるわけではありません。落ち込むときは、しっかり落ち込んでいいと私は思います。無理は禁物です。
でも、「物事の捉え方は、一つじゃないんだ」と知っているだけで、少しだけ心が軽くなる瞬間があるはず。
自分なりの「しなやかな捉え方」を少しずつ育てていけるといいですね。