インタビューのコツ2曖昧な発言を具体化する
日本はハイコンテクスト文化
日米で同じインタビューガイドで行うインタビュー調査に関わることがあります。
そんな機会にアメリカで行われたグループインタビューの動画を見せてもらうと、微妙な英語力の私でも明らかにわかる日米のインタビュイー(インタビュー対象者)の違いがあります。
その違いは何かというと、発言のセンテンスの長さです。
アメリカでは問われたことに対して、的確かどうかは別にして、聞き手にわかってもらおうとかなり詳細に答えているのが見て取れます。なので、結果としてセンテンスが長い。
これに対して日本では相対的にかなりセンテンスが短くて、ほぼ単語一つなんていうこともあるくらいです。例えば、ブランド選択理由を訊く問いに対して、「コスパかな」とか「普通なところ」とか答えて終わりみたいな感じです。かなり、言葉足らずなので、それだけでは発言の意図が良くわからず、ふわっとしています。アメリカとは対照的な小出しのコミュニケーションスタイルなんですよね。とりあえず短いストロークで場を探るという意味合いもあるのかもしれませんし、「多くは語らないけど、察してよね」といった聞き手に理解を委ねてくる感もあります。
「ローコンテクスト」のアメリカに対して「ハイコンテクスト」と言われる日本の文化を象徴していますよね。日本には昔から「以心伝心」とか「阿吽の呼吸」なんて言葉もありますからね。
曖昧な発言をどう紐解いていくのか?
「ハイコンテクスト」な文化にどっぷりつかっている私たちは、日常生活では相手の言葉足らずで意味が曖昧な発言を敢えて問いただすということをあまりやりません。逆を言うと、曖昧なことを言ってもあまり突っ込まれる経験がないということです。
でも、研究やビジネスの目的で行われるインタビューの場合、あとで分析に困るので曖昧な発言をそのままにしておくわけにはいきません。だから、突っ込みを入れる必要があるのですが、普段のコミュニケーションで自分の言ったことについて根掘り葉掘り問われる経験のない人にとって、ゴリゴリ問いただす感じは拒否反応につながります。相手が嫌にならないようなソフトなプロービング(深掘り質問)で話をうまく引き出して具体化することが必要になってきます。
例えば、先ほど例に出したブランドの選択理由を訊く問いに対して、
「コスパかな」
というような超小出しの答えが返ってきた場合、
あなただったら、どんなプロービング(深掘り質問)をしますか?
これには唯一の正解はありません。
誰が誰にインタビューするのか?
どんな場の雰囲気が形成されているのか?
どんなテーマのインタビューなのか?
当然それらによって大きく違ってくるでしょう。
それでも、いろんな状況でワークする汎用性の高い便利なフレーズというものもありますので、最後にちょっとご紹介したいと思います。
便利なフレーズ
●『〇〇というと?』
これは最初のストロークとして繰り出すプロービング(深掘り質問)に使うのに非常に便利なフレーズです。
………『コスパというと?』
●『もう少し具体的に教えてもらってもいいですか?』
もっと単刀直入に『具体的には?』と訊くこともできるのですが、詰問・尋問感を出さないためにはこれくらいソフトなほうがいいのではと私は思っています。
●『うーん、すみません!もう一声!』
これは最後の最後でいろいろ話してもらったけど、理解しきれないのでもう少し説明を加えてほしいという時に使うフレーズです。「申し訳ないけどもう少し教えてくださいね」というお願いの気持ちを込めて言う必要があります。淡々と無表情に言うと逆効果です。
その人にとっての意味にフォーカスするフレーズ
●『△△さん的に……』
△△にはインタビュイー(インタビュー対象者)の名前が入ります。例えば「コスパ」と言っても、その人にとって「コスパ」が何を意味して、どのように大切なのかという、その人固有の意味や価値観を具体的に紐解くことが大切になってきます。このフレーズを入れると、一般論的な話にずれることなくご自身の観点からのさらなるお話を促すことができます。
………『△△さん的にコスパがいいって、どういうことなんですか?』
………『△△さん的にどこにコスパの良さを感じますか?』
最後に…
はい、今回は曖昧な発言を具体化していくインタビューのコツのお話をさせていただきました。
前回の投稿 インタビューのコツ1 『個人的見解』と断る心理を考える も併せてお読みいただければ幸いです。インタビューのコツシリーズ、とりあえず自分の中で暗黙知化していることを少しずつ言語化していけるといいなという軽い気持ちで始めておりますので、順序立てて体系的なお話はできませんが、これからも不定期で続けていきたいと思います。
よろしくお願いします。